NHK「美の壺」:煎じて味わう 日本のお茶
日本の文化と伝統を深く知ることができるNHKの「美の壺」は、毎回、日常生活に潜む美しいものや日本ならではの素晴らしい技術を紹介しています。今回は「煎じて味わう 日本のお茶」というテーマで、19年目を迎えたこの番組が、お茶の世界に深く踏み込んだ内容をお届けしました。
日本茶の新しい楽しみ方
番組では、日本茶インストラクターの本間節子さんや、日本茶専門店「茶茶の間」のオーナー和多田喜さんが登場し、お茶の新しいアレンジ方法を教えてくれました。和多田さんが提案するシングルオリジンのお茶の淹れ方は、ゆっくりと低温でお湯を注ぎ、茶葉を開かせながら味わうことで、そのお茶本来の香りと味わいが引き出されます。また、ワイングラスを使ってお茶を注ぎ、氷で冷やすことで、香りが一層広がり、飲みやすく爽やかな味わいを楽しめるとのこと。和多田さんが語る「お茶を楽しむためには時間と手間をかけることが大切」という言葉は、毎日の忙しさの中でも、少しの手間で特別なひとときを作ることの大切さを教えてくれます。
本間さんも、家庭で手軽に試せるお茶のアレンジ法を提案。炭酸水を加えることで、さっぱりとした新しい飲み物に、また、柚子やすだちを浮かべることで、香り高いハーブティー風に変化させることができるのです。特に冬にぴったりの「くず湯入り煎茶」は、温かいお茶にくず湯を加えることで、まろやかで心温まる味わいが楽しめます。
煎茶文化の源流とおもてなしの精神
さらに、番組は煎茶文化の源流にも触れ、黄檗宗大本山萬福寺の吉野心源さんが紹介する「摂了茶礼(せつりょうちゃれい)」に密着。中国から渡来した隠元隆琦禅師が煎茶を日本に伝えた背景には、茶を通じての心の交流があります。吉野さんによれば、茶を飲むことは、単にお茶を楽しむだけでなく、お互いを敬い、感謝をし、心がひとつになる時間だと言います。この精神は、今日でも多くの人々に受け継がれ、茶道の流派や儀式に根付いています。
また、煎茶道の流派「黄檗売茶流」の通仙庵孝典さんは、「喫茶去(きっさこ)」という言葉を紹介。これは、お茶を出す際の心構えを表すもので、どんなお客様でも、変わらぬおもてなしの心を持ち続けることが重要だという教えです。この精神は、現代でも多くの茶席で実践されており、煎茶を通じて人と人が繋がり、心を通わせる大切さを教えてくれます。
歴史あるお茶と現代の繋がり
静岡県の徳川家康にまつわるお茶の儀式や、富山県朝日町で続く600年の歴史を持つ黒茶の文化も紹介されました。家康が愛飲した静岡のお茶を献上する「駿府本山お茶壺道中行列」では、時代衣装を身にまとい、茶壺を持って行列を進むという儀式が行われます。また、富山県の蛭谷地区では、地域の人々が集まり、黒茶を楽しむ文化が今も息づいており、その過程には深い人と人との繋がりが感じられます。
終わりに
「美の壺」で紹介されたお茶の世界は、私たちの日常に深く根付いたものだけでなく、歴史や文化とも密接に結びついています。お茶を飲むことは、単なる習慣ではなく、心を通わせ、他者とのつながりを深めるための大切な儀式であり、また、日々の暮らしに彩りを加える手段でもあるのです。番組で紹介されたように、お茶を自由にアレンジし、楽しむことで、毎日がもっと特別な時間に変わります。お茶を通じて、心をリフレッシュし、家族や友人との絆を深めていくことができると感じさせてくれる内容でした。