中国 がん専門病院 路地裏の貸し台所
今回は中国江西省南昌にある江西省がん病院近くの「愛心厨房」と呼ばれる路地裏の貸し台所に密着した『ドキュメント72時間』。病院に入院している家族や親族がここで料理をすることで、病院食よりも安く食事を提供できるこの台所には、さまざまな人々の思いが詰まっています。命に関わる治療を受ける家族のために、毎日をどう支え合っていくのか、その姿を追いました。
4月20日(土)― 命を支える「愛心厨房」
舞台となったのは、中国江西省南昌にある江西省がん病院の近くの路地裏。ここにある「愛心厨房」は、病院に入院している患者の家族が多く訪れ、料理を作って心と体を支えている場所です。家族や親族が作った食事で、病院食よりも安く、栄養満点の食事が用意できるというのが、ここを訪れる大きな理由です。
この日、取材陣は様々な患者家族にインタビューしました。夫が長期間抗がん剤治療を受けているという女性、仕事を辞めて父親の看病をしている20歳の男性、500km離れた街から来た夫婦など、多くの人々が「愛心厨房」に足を運び、料理を通じて病院生活の厳しさを乗り越えようとしていました。そこには、愛情や希望、そして必死な想いが込められた食事がありました。
4月21日(日)― 店主の想いと支え合いの場所
撮影2日目の朝、取材班は早朝5時に現場に到着。店主の万佐成さんに話を聞くことができました。万さんは、21年前にこの場所で貸し台所を始めた経緯を語ってくれました。最初に患者にかまどを貸したことがきっかけで、今では夫婦でこの厨房を運営しているとのことです。万さん夫妻は、患者やその家族にとって、ここが生活の支えとなる場所であることを深く実感していると言います。
昼間は大盛況で、食事を準備するためにやってきた家族と話をしました。妻が病気で長期間通い続けているという男性や、祖父が入院している16歳の女性など、それぞれの家庭には病と戦う親や家族がいて、料理を通じて少しでも生活の質を保とうとする姿が印象的でした。
4月22日(月)― 次世代への希望
3日目には、車椅子に乗った母親と、その付き添いをする娘が台所にやってきました。娘は料理を覚えたいという想いから、母親と共にやってきたのです。病気の母親を支えつつ、料理の技術も学びながら、次世代へとその想いを繋げていこうとする姿に感動しました。この場所は、単なる台所ではなく、家族の絆を育む場所となっていました。
また、この日はがんの転移が見つかった55歳の女性も訪れ、病気と向き合いながら、愛する人々のために食事を作るという大切な役割を果たしていました。病気の辛さを抱えながらも、家族を支えるために尽力する姿勢が強く心に残ります。
4月23日(火)― 料理を通じて母を支える
最終日、取材班は再び「愛心厨房」に足を運びました。この日は、手術後の母親のために料理を作る女性や、がんの転移が見つかった55歳の女性が訪れており、それぞれが病気と向き合いながら、日常生活の中で出来る限りの支援をしようとしている様子が描かれていました。病院での治療に加え、こうした日々の食事が、患者やその家族にとって、どれほど重要であるかを改めて感じさせられました。
支え合いと絆の場所として
「愛心厨房」には、ただ食事を提供するだけでなく、病気に苦しむ家族を支えるために、お互いに助け合う場としての重要な役割があります。この場所で料理をすることは、単なる食事作りではなく、病気と向き合う家族にとっての心の支えであり、日常の中で希望を見出す手段でもあります。
病気と戦う家族、そして支える家族の思いが交錯するこの場所で、料理を通じて絆が深まり、少しでも日常が明るくなることを願って、みんなが毎日ここに集まり続けているのです。この『ドキュメント72時間』は、病気の中であっても、家族の愛と支え合いがいかに大切であるかを再確認させてくれました。