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高知県いの町 土佐和紙 こうぞ栽培 NHK小さな旅

高知県いの町の土佐和紙:伝統を守り、未来を繋ぐ手仕事

2024年3月4日、NHK総合の「小さな旅」では、高知県いの町を舞台に、1000年以上の歴史を誇る伝統工芸「土佐和紙」を守る職人たちの姿が紹介されました。この町はかつて紙問屋が立ち並ぶほど、紙産業が栄えた場所で、今でも「紙の町」としてその伝統を色濃く受け継いでいます。土佐和紙の魅力や職人たちの努力を紹介するこの番組は、私たちに日本の伝統工芸の大切さを改めて感じさせてくれました。

土佐和紙とともに生きる

いの町の紙漉き職人、尾崎伸安さんは、代々続く紙漉きの家系に生まれましたが、最初は運送業に従事していました。しかし、40歳の時、運送業がうまくいかなくなり、家業である紙漉きに転職を決意します。この決断を後押ししたのは、お父さんからの技術を受け継ぐという強い想いでした。

尾崎さんは、土佐和紙を作る過程を丹念に語ります。土佐和紙は、植物の繊維が混ざった水を数十回漉くことで、独特の手触りと丈夫さを持った紙が仕上がります。そのため、職人たちは注文に応じて漉く回数を調整し、厚さを変えながら一枚一枚心を込めて作り上げていきます。今、尾崎さんが営む工房では、息子の太一さんが職人として、伝統を受け継ぎながら活躍しています。太一さんは、幼少期から父の仕事を見て育ち、5年前から本格的に紙漉きの技術を学び始めました。昼間は職人として、夜はアルバイトをしながら、その技を磨いているという。

尾崎さんは、息子にできるだけ良い状態で伝統を繋げていきたいという強い思いを抱きながら、日々の作業に励んでいます。その背中を見て育った太一さんは、父の思いを受け継ぎ、次世代へと土佐和紙の灯を灯し続ける決意を固めているのでしょう。

和紙の原料を育む農家の支え

土佐和紙を支えているのは、職人だけではありません。和紙の原料となる「こうぞ」を育てる農家たちも重要な役割を果たしています。こうぞは、かつて農閑期に多く育てられていましたが、現代では栽培を辞める農家が増えているのが現状です。しかし、筒井茂位さんは15年前から仲間たちとともに、こうぞの栽培を続けています。

ある週末、地域の人々が集まり、こうぞの枝を蒸す作業が行われました。蒸した枝からは、和紙の原料となるこうぞの皮が剥がれやすくなります。この作業は、和紙作りに欠かせない重要な工程です。筒井さんは、「みんなで続けていければ」と語り、こうぞ栽培に対する情熱を感じさせます。

伝統を未来に繋ぐ教育

尾崎さん親子は、地元の高校で紙漉きの授業を行い、若い世代に土佐和紙の大切さを伝えています。伝統工芸を学び、次世代に繋いでいくことの重要性を感じ、若者たちに手仕事の魅力を直接伝える機会を作っています。和紙は、単なる紙ではなく、人と人とを繋げる大切な役割を持つ文化だということが、彼らの教えの中で実感できます。

和紙の力で人と人を繋ぐ

土佐和紙の魅力は、その美しさや使い勝手の良さだけでなく、作り手と使い手、そしてそれを支える人々の絆にあります。尾崎さん親子をはじめとする職人たち、こうぞを育てる農家、そして地域の人々が力を合わせて守り続けているこの伝統工芸は、未来に向けてますます大切にされるべきものだと感じます。

和紙が生まれる過程には、心と技が込められており、それが人と人とを繋げる力となっています。いの町の土佐和紙が、これからも多くの人々に愛され、伝統が次の世代へと受け継がれていくことを願ってやみません。