「スナック」とは何か?外国人博士が見た日本の深層文化
2024年12月15日、NHK総合で放送された『最深日本研究 〜外国人博士の目〜』では、社会人類学者であるモーラ・マグラー氏が日本の「スナック」文化に迫りました。スナックという存在は、外国人には驚きと興味をもって受け入れられる一方で、日本独自の文化として深い魅力を持つものでもあります。モーラ氏は、その謎を解き明かすため、全国のスナックを訪れ、フィールドワークを行いました。彼女が見た「スナック」という日本独自の文化の魅力に迫ります。
スナックとは?その基本を探る
スナックとは、カウンター席が中心の小さな酒場で、主に女性が経営する店です。モーラ氏が特に注目したのは、この形式がいかに日本特有であるかという点でした。彼女が初めてスナックを訪れた際には、店のママが客に対してしばしば厳しく接する場面に驚きました。例えば、氷の買い出しを客に頼んだり、時には叱ることもあります。このような光景は、アメリカでは見られないものです。さらに、スナックでのサービスやコミュニケーションの取り方には、日本独自の文化が色濃く反映されています。
モーラ氏によると、アメリカではチップを得るために店員は仕事をしなければならないとされていますが、日本のスナックでは「客が頑張るところ」が評価されるという点が興味深いといいます。スナックは、ただ飲み物を提供する場ではなく、客同士やママとの関係性を深める場所であるため、客の行動がその場の雰囲気や常連化に重要な役割を果たしています。
スナックの不思議なシステム
モーラ氏は、スナックをより深く理解するために、定点カメラを設置して観察を行いました。ここで明らかになったのは、スナックの「客としての仕事」の重要性です。新しい客が来ると、常連客が積極的にその客を歓迎し、乾杯をして打ち解けようとします。また、ある常連客がママから氷の入っていないグラスを渡されると、他の常連客はそれが何らかのサインであるかどうかに戸惑うという独特のシステムが存在することがわかりました。このように、スナックでは客が店の一部として機能しており、他の客と積極的に関わりを持つことが求められるのです。
モーラ氏は、スナックでの「場所を守るために努力する」文化を社会人類学的に解釈しました。客は、孤独感を感じることなく居場所を確保するために、スナックという場所を訪れ、他の客とつながる努力をしていると説明しています。
変わらないスナック、そしてその魅力
スナックは一度行っただけではその本質が見えないとモーラ氏は語ります。彼女が訪れた四谷の老舗スナックでは、7度目の訪問でようやく店のママが語り始め、彼女の過去やスナックの歴史についての新たな情報を得ることができました。1960年代、風営法改正により深夜営業が制限され、軽食を提供することで営業を続けるスナックが登場しました。こうした変化を経て、スナックは現在でも多くの人々に愛され続けています。
秋子ママは、居酒屋やカラオケボックスの普及によってスナックが衰退すると言われていた時期もありましたが、今では「孤独を感じる人が集まる場所」としてスナックの存在意義を語りました。孤独を感じる人々にとって、スナックは心の拠り所となっており、そこに集うことで寂しさを紛らわせることができるのです。
変化するスナック
モーラ氏は、スナックの変化にも注目しました。彼女が初めて訪れたスナックでは、若いママが運営しており、店に訪れる客層にも変化が見られました。以前は誰かを誘って訪れることが多かった常連客も、今では一人で来ることが普通になっているといいます。モーラ氏は、スナックが多様化している中で、うまく時代に適応した店が今後も続くであろうと述べています。
結びに
モーラ・マグラー氏の研究は、日本のスナックという文化を外国人の視点から深く掘り下げ、その魅力を再発見させてくれるものでした。スナックは単なる飲み屋ではなく、人々が孤独を癒し、コミュニケーションを楽しむ場所であり、また、文化的な背景が色濃く反映された日本独自の社交場でもあります。モーラ氏のような外国人研究者の目を通じて、私たち日本人もスナック文化の新たな一面に気づくことができるのではないでしょうか。