歌舞伎町の夜を支える「ニュクス薬局」—眠らない街の“保健室”
東京・新宿の歌舞伎町。夜の街として知られるこのエリアで、昼も夜も関係なく働く人々に欠かせない存在がある。それが、「ニュクス薬局」。通称、“歌舞伎町の保健室”。夜間に営業する薬局として、ここは深夜まで働く人々の健康を守り続けています。
眠らない街を支える薬局
「ニュクス薬局」の薬剤師・中沢宏昭さん(46歳)は、10年前からこの薬局を切り盛りし、夜の街に暮らす人々の命を支えています。歌舞伎町という特殊なエリアでは、昼間はともかく、夜になると薬局や医療施設がほとんど閉まってしまうことが多いため、中沢さんは「開いているところがどこにもないのは、おかしい」と感じ、この薬局を開くことを決意しました。
薬局は夕方から午前2時半まで営業しており、深夜に働く人々の多くがこの薬局を訪れます。特に、夜間に働くホストやホステス、警備員、タクシー運転手など、歌舞伎町で生活する人々にとって、日中の医療機関が閉まっていることが困りごとになることが多いのです。患者からは、「夜間病院が開いていても、薬局が開いていないことが多かったので、本当に助かる」と感謝の声が寄せられています。
夜の仕事に寄り添う
中沢さんが薬局を運営するうえで心がけているのは、単に薬を渡すだけでなく、患者がホッと一息つけるような場所を提供することです。「特に夜の仕事をする人は、特有のストレスを抱えている場合が多い」と中沢さんは言います。薬局を訪れる人々が、少しでも心身をリラックスさせ、元気を取り戻せるような雰囲気作りを大切にしているのです。
中沢さんの壮絶な経験
中沢さんがこの仕事を続ける理由の一つには、命の大切さへの深い理解があります。かつて、昼夜逆転の生活が体に影響を及ぼし、突然倒れて入院するという経験をしました。「一歩遅かったら命がなかったかもしれない」と医師に言われた中沢さん。その経験から、“人の命はいつなくなるか分からない”という意識が強くなり、今でも仕事に対して真剣に向き合っています。
歌舞伎町に欠かせない存在
現在、「ニュクス薬局」は歌舞伎町にとって欠かせない存在となっており、中沢さんは「自分で決めたことは最後までやりきりたい」と語ります。彼にとって、この薬局はただの仕事ではなく、地域の人々を守る重要な役割を担っているのです。患者が仕事を終えて薬局に立ち寄り、無事に帰るのを見届けてから閉店する――その光景には、深い思いやりが感じられます。
中沢さんの“アスヨク”ソング
中沢さんのモチベーションには、音楽も影響を与えています。彼が愛する曲は、THE BLUE HEARTSの「1000のバイオリン」。この曲は、彼の強い意志を表現するものとして、日々の努力を支え続けているそうです。夜の街で働く人々にとって、彼の薬局はまさに“アスヨク”(明日がよくなりますように)を実現する場所となっています。
まとめ
「ニュクス薬局」は、ただの薬局ではありません。歌舞伎町という特異な街で働く人々にとって、命を守る重要な役割を果たし、“眠らない街”の守り神となっています。中沢さんのような存在がいることで、夜の街で働く人々は、安心して仕事を終えることができ、次の日へと続く活力を得ることができるのです。彼の思いと使命感が、今日も歌舞伎町の夜を支えています。