弘前の味と歴史を守り続ける「三忠食堂」 – 100年を超えて受け継がれる津軽そばの魅力
青森県弘前市の「三忠食堂」は、創業から100年以上の歴史を誇る、津軽地方の伝統を色濃く受け継いだ食堂です。旧国道7号線沿いに位置し、地元の人々に愛されてきたこの食堂は、津軽そばを中心に、時代を超えて伝承されてきた食文化を大切にしながら、今も変わらぬ味を提供し続けています。
津軽そばと家族の歴史
三忠食堂の歴史は、盛岡から弘前にやってきた初代黒沼他人次郎さんが、農作業の合間に食べられていた「津軽そば」を屋台で提供したことから始まります。時を経て、二代目の忠次郎さんが大正時代の「観桜会」期間中に屋台で津軽そばを提供し、三代目の忠一さんが店舗を構えることになりました。現在の四代目・黒沼三千男さんとその家族によって、三忠食堂は津軽そばの名店として今も多くの人々に愛されています。
手間暇かけて作られる「津軽そば」
三忠食堂の名物である津軽そばは、他では味わえない独特の食感と味わいが特徴です。そばのつなぎに使用するのは、小麦粉ではなく大豆粉と呉汁(大豆をすりつぶしたもの)。この材料は、津軽地方で小麦粉の栽培が少なかったため、身近な食材を使った知恵の産物です。作り方は非常に手間がかかり、そばがきを作り、一晩寝かせてからそば粉と大豆粉を混ぜ合わせ、さらに寝かせて熟成させます。注文が入ると、茹で置きされたそばをお湯で温め、焼き干しと昆布から取った出汁と合わせて提供されます。繊細な食感と上品な旨みが感じられる津軽そばは、食べる人々を魅了し続けています。
津軽文化を受け継ぐ食堂の未来
三忠食堂の歴史は、ただ料理を提供するだけでなく、津軽地方の食文化や伝統を次世代に伝えることにも力を注いでいます。五代目となる卓也さんが、9年前から厨房を手伝い、この大切な食文化をさらに多くの人々に伝えるために力を尽くしています。また、三忠食堂は毎年弘前の「さくらまつり」期間中にも営業を行っており、観光客にも地元の味を提供しています。
こだわりの「カレーライス」
津軽そばに並ぶ名物として、三忠食堂のカレーライスも忘れてはなりません。具材はシンプルにタマネギと豚肉のみですが、魚の出汁を使ったソースが特徴です。このカレーライスは、食べるたびにその深い味わいに驚かされます。スパイスの優しい刺激と、タマネギの甘さ、豚肉のジューシーさが絶妙に絡み合い、どんどん手が進んでしまいます。
三忠食堂の魅力
三忠食堂は、津軽そばを通じて、地元の食文化と歴史を大切に守り続けるお店です。味だけでなく、家族経営の温かさや、代々受け継がれてきた技術と知恵が詰まった料理は、訪れる人々に深い感動を与えます。弘前を訪れた際には、ぜひこの歴史ある食堂で、津軽の味を堪能してみてください。
【店舗情報】
- 創業年: 明治40年(約100年前)
- 住所: 〒036-8021 青森県弘前市和徳町164
- 電話番号: 0172-32-0831
- 営業時間: 11:00~19:00(L.O.)
- 定休日: 火曜日
- アクセス: 弘前駅から車で約10分、旧国道7号線沿い
- 特徴: 伝統的な津軽そば、カレーライス、弘前さくらまつり期間中営業