2024年11月30日に放送された『新プロジェクトX〜挑戦者たち〜』では、未完150年の悲願であったトルコ・ボスポラス海峡の海底トンネル工事に挑んだ日本の技術者たちの壮絶な物語が紹介されました。番組では、海流という巨大な壁に挑む日本人技術者たちの姿が描かれ、その情熱と忍耐力に感動が呼び起こされました。
トルコ・イスタンブールの挑戦
イスタンブールは、アジアとヨーロッパが交差する非常に珍しい都市で、その象徴的なボスポラス海峡を越える鉄道トンネルが計画されました。市内の排気ガス問題と交通渋滞を解消するため、海底を通る鉄道トンネルが重要な解決策として浮上。しかし、この工事は世界中のゼネコンが尻込みするほどの難工事でした。
鋼鉄の男・小山文男と仲間たち
その難工事に挑んだのは、大成建設の小山文男をはじめとする日本の技術者たちでした。海底に直接トンネルを作るという特殊な工法—沈埋トンネル工法を選択し、現場で直面する数々の困難を克服しながら、彼らは工事を進めていきました。トンネル工事を支えたのは、物静かな鋼鉄の男、小山文男の強いリーダーシップと仲間たちの力強い協力でした。
海流との闘いと謎の潮流
ボスポラス海峡は潮流が予測不可能で、荒れ方が凄まじく、工事の進行を大きく遅らせる要因となりました。潮流の謎を解くため、シミュレーションを専門とする伊藤一教と織田幸伸が課題に挑みます。最終的に、黒海で圧力が変動することが潮流に影響を与えることが判明し、その予測が工事の鍵を握ることになりました。
困難の中で生まれた「マルマライ」
トンネルの建設が順調に進む中、現場では数々のトラブルが発生します。特に地盤改良においては硬い岩盤に阻まれ、予定の100分の1しか進まないという状況でした。その中でリーダーシップを発揮したのが木村政俊でした。彼は、現場の危険を顧みず、最終的には沈埋函を設置するために海底に潜る決断を下します。この瞬間が、トンネル建設の大きな転機となりました。
完成したマルマライとその後
2008年、最後の沈埋函が海底に設置され、海底トンネル工事は無事完了。2013年には、鉄道トンネル「マルマライ」が開通し、計画から4年半遅れではありましたが、トルコの交通システムに大きな変革をもたらしました。現在、マルマライは1日65万人が利用する重要な鉄道となり、トルコと日本の絆を象徴する存在として多くの人々に感謝されています。
20年後の思い
着工から20年が経過した今でも、工事関係者たちはその苦労を共にしたチームとともにトルコ料理を囲みながら、その思い出を語り合っています。木村政俊さんは、妻とのテレビ電話が心の支えとなり、家族とともにマルマライに乗る日を楽しみにしているといいます。
この壮大な挑戦と成し遂げられたプロジェクトの裏には、数々の困難やドラマが詰まっています。番組では、こうした困難に立ち向かった技術者たちの不屈の精神と、その後の成果に感動することができました。